E695D823-98BC-4323-A2AD-0923FE0D0BD7
パッチワークを教えて生計を立てようと動き始めた頃
息子の同級生のお母さんが持っていたバックに
釘付けになった
着物の布を使った複雑なデザインのそれは
私の技量のレベルを遥かに超えていたからだ

配色のセンス、形の良さ、丁寧な縫製…
どれをとっても完璧で宝石の様に御光が差して見えた

当時の私は夢ばかりが先行して
実力は全然伴っていなかった
誰に習った訳でも無く
ただ自己流で楽しんで来ただけなので
自信のなさは否めなかった

私はどうしてもそのバックの作り主に
会いたくなる
何時も不思議に思うのだが
普段はどちらかと云うと引っ込み思案なのに
こういう時には物凄く図々しくなる

強引に彼女を紹介して貰い、家にお邪魔する事になった
そこで二度目の衝撃を受ける
手作りのパッチワーク作品が何気無く
生活に溶け込んでいて品が良い

先ず玄関を入って右の下駄箱の上に上質の小物が並び
その下には目立ち過ぎない程の
淡い色調のパッチワークの敷物がしかれていて
足元には浴衣布で繋いだ玄関マットが
出迎えてくれた

リビングに入ると
大きめのソファーには藍染のクッションが3個並び
微妙に柄が違う
サイドテーブルにはやはり藍染の布で
丁度良いサイズのテーブルセンターが
灰皿の下に敷いてある

隣の和室にもキッチンにもトイレにも
至る所にさりいげなく手作り品が置かれていた

初めてのお宅訪問で余りキョロキョロしては
流石に失礼だと思い
極力平静を装っていた(つもり)が
内心は久しぶりに興奮していた

目に焼き付けてしっかり記憶して置きたかった

その後15年以上も付き合って貰う大事な友人に
なるのだが
この時は『何て図々しい人』と思ったらしい
そりゃそうだろう‼︎
私の成長は彼女の存在無くしては語れないが
欠点だらけの私を妹の様に引き揚げてくれた人だ

教えるからには基礎をしっかり習わなければ…
という彼女の勧めもあり
それから10年間一緒に教室に通う事になった

もう一人やはりパッチワークを始めなければ
絶対に接点の無かった友人を紹介しよう

私がパッチワーク好きなのを知っていた知人が
隣町で1日限りのパッチワーク教室があると
教えてくれた

早速参加すると自宅の離れに5〜6人が集まっていて
材料は全部用意してくれていた
ティッシュBOXのカバーで指示されるままに
繋いでいくのが楽しくて楽しくて
あっという間に時間が過ぎていった

私は1日限りには絶対したくない!と思って
またまた図々しく
その後も是非教えて欲しいとしつこくお願いして
私ともう一人が
引き続き教えてもらう事になった

彼女も独学でただ好きだから続けて来ただけなので
人に教えるなんてとんでも無い…という人だった

それにしては壁に何枚も大作が並び
バックも沢山作ってあったので
是非習いたいと思った
当時の私は未だ一度も大きい作品を
作った事が無かったので
彼女から繋ぎ方、仕上げ方等を学びたかった
月に1〜2回は通う様になり
交流が深まっていった

彼女は私より14才年上にも関わらず
外見も感性も若々しくてお茶目な人だ

旧家に嫁いだ彼女は当時出会った頃
お姑さんの介護に畑仕事、町の役員
農協の幹事、御近所の付き合いと
大忙しの中どうやってこんな大作を作る
事が出来るのか不思議で仕方無かった

何でもない事の様に明るくこなしてしまう彼女を
リスペクトせずには居れなかった

年齢差も地域の差も家柄も関係なく
付き合って来れたのは
一重にパッチワークが繋いでくれた
縁の賜物だと思っている

1年位通う内に90センチ四方のタペストリーを
仕上げる事も出来る様に成っていた
それだけでは無く村社会との付き合い方も
教わっていた気がする

二人で旅行する時は喋りどうしでも
話が尽きなかった
御近所のちょっとした愚痴や家族の事を
話してくれるのがとても嬉しくて
いつの間にかタメ口になってしまう私を
笑いながら受け止めてくれる包容力が
大好きだった😘

そして3人で教室に通う事になるのだが
それは又明日。お楽しみに…